パーツと消耗部品を長持ちさせるために

プラズマアーク切断 (PAC) における、最も一般的で頭の痛い問題は、部品の耐用期間の短さです。この問題は、部品交換やトラブルシューティングのために、消耗部品の経費と装置のダウンタイムが増加し、金属加工業者に痛手を与えます。ほとんどの会社では、ピアス数、アーク使用時間、加工処理数などにもとづいて部品の寿命を記録しています。通常、部品が予想より長持ちしないことに最初に気づくのは、オペレーターです。ここでは、オペレーターやメンテナンス担当者が部品の耐用期間の問題をトラブルシューティングする際に利用できる技術的なヒントを説明します。

警告!プラズマアーク切断 (PAC) 装置を操作したり修理する前に、取扱説明書の安全に関する説明を必ずお読みください。PAC システムは高圧直流 (DC) および電力を使用します。感電により、負傷や死亡事故が発生する危険性があります。

状態

電極とノズルが予想されるより早く摩耗し、切断品質が劣化し、ピアスできなかったり、切断中突然アークが消える。

背景

電極は電源装置から負の直流電荷を運びます。これは、アークに耐える融点の高い金属であるハフニウムやタングステンでできた放射エレメントを入れた銅製のホルダーで構成されます。放射エレメントはアークの熱と高速プラズマガスのストリームで少しづつ浸食されていきます。通常の摩耗では、部品の末端に小さな窪みができて、一度に数千分の 1 インチの一定した割合で、0.040 インチから 0.125 インチまで減っていきます。この窪みが深くなりすぎると、アークが銅のホルダーに付着し、ホルダーが解け始めます。アークの発生開始と維持ができなくなると、電極は「故障」することになります。この状態になる前に、電極を交換するのが得策です。

ノズルはプラズマジェットに集中しています。ノズルの穴は完全な円形で同心でなければなりません。穴の直径と長さの両方が重要です。オリフィスに損傷があると、アークの形状に影響し、切断品質が低下します。プラズマアークは銅材質に接することなくノズルを通過します。それはノズルの壁が渦巻きガスの境界層で保護されているからです。アークがノズルに接すると、材質のいくらかが溶融します。ノズルの通常の摩耗はオリフィスの最先端の部分で穴の表面をわずかに削ったり、穴を大きくします。点火時に部品の表面になんらかの損傷が生じ、熱による変色がオリフィスの周りに発生します。内側表面に酸化ハルフニウムが蓄積すると、ガスの流れを妨げます。まっすぐなアークが生成されず、クリーンカットが得られなくなると、ノズルが「故障」したことになります。

最新のエアと酸素プラズマシステムの通常の部品寿命は、アーク使用時間 1~2 時間、またはピアス切断数百個分です。システムによっては、部品を交換するまでに 1,000 回以上のスタートが可能なものもあります。

問題解決

部品寿命の問題を解決する最初のステップは、部品をよく調べて、どの部品が故障しているかを判断することです。部品にはたいていの場合、故障原因と判断できる目に見える兆候が示されています。

3 つの考えられる原因があります。

ケース 1:電極が不良でノズルも不良

部品を調べてみて、電極とノズルの両方がひどく摩耗している場合は、電極がノズルの故障を引き起こしていることがほとんどです。電極は上流にあるので、溶融された素材が部品の端から吹き飛ばされてノズル内部に蓄積することでノズルの損傷を起こします。長い間使用していると、すべての部品がこれと同じ過程で故障します。

電極に広く深い溝があり、銅部分が過熱によって薄茶色、青色、黒色に変色している場合は、クーラントの流れが不十分であることが原因と思われます。極端なケースでは電極の末端が溶融していることもあります。冷却用媒体の流量を確認することが必要です。冷却水を使用するトーチでは、クーラントタンクのリターン部分でバケツテストを行って冷却水の流量を調べます。仕様に合っていない場合は、ポンプの問題、ねじれ、漏れ、フィルタの詰まりその他の障害がないかを確認してください。ガスでトーチを冷却している場合はガスの流量が減っていないか調べます。

電極の末端全体に小さなへこみが無数にあリ、ノズルの内側にも同じような損傷が見られる場合は、ガス流量の低下を示しています。ガス流量が低下すると、ノズルと電極間のアーク放電がコントロールできなくなります。トーチへのガス流量を調べます。最善の方法は、テストするシステムのトーチのアウトレットに流量計 (0- 400 cfh) とホースを接続して行う方法です。これができない場合は、プラズマガスだけをオンにして、トーチのアウトレットでガスの流れを感触で調べるクイックチェックを行います。吸い込み力がある渦巻きガスの流れが実際に感じられるはずです。

電極に黒い蓄積物が大量にみられる場合は、ガス汚染を調べます。キッチンペーパーでクイックチェックができます。システムにガスを流しながら、きれいなキッチンペーパーをトーチの下に当てます。湿気や汚れが見えてはなりません。

ケース 2:電極は正常でノズルが不良

電極が新品同様でノズルがひどく損傷している場合は、ノズルの二重アーク放電が原因であると考えられます。これはアークがノズルに接して、オリフィスの銅素材が浸食されているときに発生します。

ノズルの穴の内側がスロット、「鍵穴」のように損傷している場合は、プラズマチャンバー内の圧力が低いことを示しています。これによってアークがノズルに触れます。ガスラインに圧力を加え、接続部分すべてに石鹸水を塗って、漏れがないか調べます。

ノズル外側の損傷はしばしばトーチとワーク間の距離の問題を示しています。まずピアス高さをチェックします。金属スパッターを防ぐため切断高さの二倍が必要です。ノズルが予想されるより早く故障する一番の原因はピアシングが低すぎることです。トーチ高さコントロールが正しく機能しているか調べます。トーチがピアシングを行っている時に材料に押し付けられていたり、切断中に材料に擦りつけられている場合は、ノズルがすぐに破損します。

ノズルが非常に過熱しているように見えたり、薄茶色、青色、黒色に変色している場合は、シールドガス流量を調べます。シールドガスはノズルを冷却し、トーチの前面端を保護します。

ケース 3:電極が不良でノズルが正常

ノズルが良好な状態にあり、電極に深い窪みが見られる場合は、プラズマガス流量が多すぎることが考えられます。プラズマガスの渦巻きが激しすぎると、エレメントが速く浸食します。これにより急速な摩耗が起こります。プラズマガスの流量容量を調べてください。

4 つめのケースも考えられます。 どちらの部品も新品同様なのにトーチが「点火」せず、新しいセットを使用すると開始できる場合、問題は部品の寿命ではなく、スタートが困難という問題です。点火しないという理由で、実質的に良好な状態の電極とノズルが廃棄されることがしばしばあります。スタートの困難は、トーチを点火するときプリフロー中にプラズマ圧力が過剰になっていることで起こることがよくあります。通常、トーチはカチカチと火花を飛ばしますが、発火しません。

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