PAC 冷却装置の問題解決

冷却を維持して稼働可能時間と部品寿命を増加

トーチクーラントとは?

トーチクーラントは、脱イオン水と凝固点を降下させる溶質でできた作動流体です。凍結のリスクがない多くのショップでは、通常の脱イオン水を使用しています。脱イオン水は、冷却ラインの劣化やプラズマトーチのスタート困難の一因となる可能性のある導電性イオンが含まれていないことから使用されます。図 2 は、プラズマトーチ内部のクーラント経路を示した図です。クーラントは自動車の冷却装置に使用される物質に似ていますが、重要な違いがあります。漏れを詰まらせて止める物質が含まれたラジエーターの凍結防止剤は、プラズマシステムには適していません。

図 1 - 典型的なトーチ冷却装置の図
図 1

冷却装置

典型的な PAC 冷却装置は、モーター、ポンプ、冷却ライン、トーチ、フロースイッチ、熱交換器、貯蔵器で構成されています (図 1 を参照)。1⁄3~1⁄2 hp のモーターが標準です。システム内にモーターとポンプが過酷に使用されるような制約条件がない限り、モーターには通常長い耐用年数があります。

ポンプ

プラズマシステムにはロータリーベーンポンプがよく使用されます。これらのポンプには、ポンプの動作圧力と流量を増加または減少する調節可能なバイパスネジが付いています。これらのポンプのベアリングは消耗品です。モーターとポンプ間のカップリングも故障することがあります。ポンプ内のポンプ翼の材質が、ポンプに圧力がかからなくなるまで摩耗することもあります。

冷却ライン

冷却ラインは、クーラントをプラズマトーチに運びます。通常はこれに DC 主電源ケーブルも含まれています。水冷式の電源ケーブルは、銅線(複数のより線)の加熱を防ぎます。マシンアプリケーションでは、冷却ラインは柔軟性のあるケーブルトラックに通すか、切断機の上に取り付けます。ひびや切り傷のある、または融解したホース、破損したコネクターから漏れが発生することがあります。詰まりは、特にプラズマトーチからのリターンホースにもよく起こります。故障した部品のごみがトーチ内やリターンリードに蓄積すると流れが制限されます。銅製の電源ケーブルも、常時曲げた状態になると劣化して、繊維がホースの両端に詰まることがあります。リード内の詰まりは、流量の低下やポンプとモーターの摩耗の増加につながります。

トーチ

図 2 - プラズマトーチ内部のクーラント経路図

トーチは、どの PAC 冷却装置でも主な詰まりの原因となる場所です。クーラントの速度を増加して、熱交換を最大化するため、トーチ内部の水路は小さくなっています。ほとんどの高電流電極は、放射エレメントの周囲に銅の柱を形成するため、圧延されて内側が空洞になっています。この柱にトーチ内の水管が延び、クーラントが柱に沿って流され、電極の裏側の内側に流れて熱を奪います (図 2 を参照)。これらの経路にクーラントが適切に流れるようにするためには、トーチとクーラントに汚染物質がないことが重要です。

フロースイッチ

フロースイッチは、クーラント流量が低下したときにトーチや部品の突発故障を防ぐように設計されています。真鍮製のブロックプランジャータイプの装置は通常、システムを実行するためには必ず満たされなければならないマイクロスイッチと共に使用されます。フロースイッチは機械的または電気的に故障します。つまり、プランジャーが突っかかって動かなくなったり、スイッチコンポーネントが故障することがあります。フィルターほんどのシステムには、一般に販売されている水処理フィルターに似た、粒子フィルターが使用されています。5 ミクロンのペーパーフィルターまたはイオン除去フィルターが標準です。フィルターは 2~3 ヶ月毎、またはシステム内のクーラントの流量や圧力が低下する毎に交換する必要があります。

熱交換器

ほとんどのシステムには、作動流体から熱を取り除くラジエーター翼とファンが付いた熱交換器が使用されています。冷蔵装置でクーラントを冷却するシステムもあります。これらのシンプルな装置の最も一般的な故障は、ファンモーターの焼損です。

クーラント貯蔵器

クーラント貯蔵器には通常、水位インジケーターまたはフロートスイッチが装備されています。タンクは毎日点検し、常に十分なクーラントが入っていることを確認します。クーラント水位の低下は、クーラントの流れに空気が入り、冷却力が低下します。システムが連結されている場合、クーラント水位の低下が断続的またはシステムの完全なシャットダウンの原因となることがあります。タンクの底に粒子が蓄積することがあります。これは洗い流して取り除く必要があります。クーラントのリターンフローは、クーラント貯蔵器のフィラーキャップを通して見ることができます。

問題解決

クーラントの流れをチェックする:クーラントの圧力または流量が変動するように見える場合は、クーラントが貯蔵器の上部に入る所でクーラントの流れをチェックします。クーラントは透明でなければなりません。乳白色に見える場合は、システム内に空気が入り込んでいる可能性があります。これは通常、貯蔵器の水位が低いことが原因です。ポンプを作動させながら 2 分間かけてクーラントを追加し、推奨される水位に維持します。こうしても乳白色の問題が解決しない場合は、ポンプの注入側の接続部がゆるんでいて空気がシステム内に吸い込まれている可能性があります。ロータリーベーンポンプの一般的な問題は、出力圧力を調節した後に袋ナットとシーリングガスケットが外されたままになっていることです。空気がシステム内に入り込むの防ぐために、袋ナットとガスケットを取り付ける必要があります。

クーラント経路をチェックする:圧力または流量測定値がメーカーの推奨値よりも低い場合は、全クーラント経路をチェックしなければなりません。まず、ポンプの手前にあるフィルターを点検します。次に、ポンプ自体を点検します。時間の経過とともに、ポンプの消耗を補うための調整が必要となります。調整手順はポンプの種類によって異なるため、取扱説明書に詳細が記載されているはずです。最後にすべてのホース、リード、およびフィッティングを点検して、すべてが正しく締められ、曲がったり破損したホースがないことを確認します。

クーラント流量をチェックする –「バケツテスト」:システム内を流れる実際の流量を確認するために、この簡単なテストを行います。貯蔵器からクーラントリターンリードを取り外します。ポンプを起動します。クーラントのリターンフローを一定時間 (通常は 1/2~1 分間) きれいな容器に溜めてから、ポンプを停止します。溜めたクーラント量を測定して、この値を 1 分/1 時間当たりのガロン/リットル値に換算します。結果をメーカーの推奨値と比較します。

クーラント流量をチェックする – 流量計:適切なクーラント流量を確認するより優れた方法は、リターンラインがクーラントに入る直前の場所に流量計を取り付けることです。簡単な 0~4 gpm のフローチューブ (50 ドル未満) が適しています。これは、部品やトーチの故障の安価な保険となります。

クーラントの導電性/低効率をチェックする:時間とともに、クーラントは粒子やその他の導電性材質によりイオン化および/または汚染されることがあります。これにより、パイロットアークの開始に使用される高電圧電気が冷却水中に消散されてしまい、プラズマトーチのスタート困難の原因となることがあります。導電率計を使用してクーラントをチェックすることができます。クーラントの低効率は、10 マイクロオーム未満または 10,000 オーム/cm 抵抗を超えなければなりません。