PAC 装置のメンテナンス
マーフィーの法則によれば、プラズマ切断機は一番必要なときに限って、つまり大型材の切断作業の最中などに故障します。最大 1 時間 200 ドルという、フル稼働の切断機のダウンタイムは大きな費用となります。
多くのショップでは、プラズマ切断システムの定期的な予防保全メンテナンスが予定されていません。2~3 ヶ月も放置しておくと、切断機は設計通りに機能しなくなります。機械部品が時期尚早に摩耗し、機械動作が粗雑になります。特に高い切断速度においては、これが許容範囲を超える部品や切断品質不良につながりることがあります。切断機の部品が故障すれば、トラブルシューティングや修理に何日もかかることがあります。
マシンコンポーネントであるレール、ギア、ラック、その他を手入れします。レールを水平にし、位置を合わせます。ギアとベアリングの位置を合わせ、調節します。テーブルとワークピースに対してトーチの直角度をチェックします。オペレーターの安全を確保し、切断機の損傷を防ぐために正しく機能する必要がある、安全リミット機能をチェックします。ドライブモーターとコントロールを調整します。
以下は、定期点検メンテナンスプログラムの出発点として役に立つチェックリストです。
- トーチ本体を手入れする
トーチ部品を取り除き、トーチ内部を点検します。スレッドに機械的な損傷の兆候がないかチェックします。電気接点クリーナーと綿棒を使って、トーチ内部を手入れします。トーチを取付けチューブから取り外し、チューブをスライドさせて、トーチリードフィッティングが見えるようにします。接続部に漏れや損傷がないか点検します。金属粉塵が溜まっていれば、吹き飛ばして取り除きます。 - トーチリードを手入れする
トーチリード全体を拭き取るか、吹き飛ばして、溜まっている金属粉塵やほこりを取り除きます。金属粉塵は、プラズマアークのスタートに必要な高電圧が消散する原因となります。ねじれたり摩耗したホース、むき出しになったワイヤー、ひびが入ったフィッティング、その他の損傷がないか点検します。高周波シールドがアース接地に正しく接続されていることを点検します。 - 電源装置の手入れ
金属粉塵が溜まっていれば、きれいな乾燥した工場エアを使って取り除きます。金属粉塵は、電源装置コンポーネント、特に PC 基板の損傷の原因となります。金属粉塵が蓄積すると、コンタクター、リレー、およびスパークギャップアセンブリが誤動作することもあります。電源装置ハウジングのエアフィルターを点検し、必要に応じて交換します。 - トーチの冷却コンポーネントを点検する
水冷式トーチは、タンク内のクーラントの流れを見て、空気の吸い込みや流量低下の兆候がないか点検します。リターンフローが指定されたガロン/分であることを確認します。リターンラインのフロースイッチが正しく機能しているか点検します。クーラントフローの低下はトーチが過熱する原因になることがあります。クーラントフィルターとポンプスクリーンを点検し、必要に応じて手入れまたは交換します。導電率計があれば、それを使用してクーラントの抵抗率を点検します。ほとんどのシステムでは、抵抗率が 10 ミクロオームを超えないようにします。6 ヶ月毎にクーラントを流し、補充します。 - 水質をチェックする
二次水の水質は、ウォーターインジェクショントーチに特に重要です。水の硬度が 8.5 ppm または 0.5 グレインを超えないようにします。硬水は、鉱質沈着物がノズル上に蓄積する原因となり、寿命の短縮につながります。必要に応じて業務用の硬水軟化剤を使用します。ウォーターテーブルの水質もまた重要です。テーブル内の水がスラグや金属粉塵でひどく汚染されていると、プラズマトーチのスタート問題の原因となることがあります。また、切断ピースにさびが蓄積する原因になることもあります。 - プラズマをチェックする
ガスの品質は、良好な部品寿命と切断品質の維持に重要です。エアの質を点検するには、テストモードでシステムにエアを流しながら、きれいなキッチンペーパーをトーチの下に当てます。水、オイルミスト、または粒子による汚染がないかチェックします。毎週フィルターを点検します。湿気トラップに水が溜まり始めたらそれを空にします。 - マシンコンポーネントを手入れする - レール、ギア、ラック、その他。
脱脂洗浄剤と研磨パッドを使用して、グリース、ごみ、金属粉塵を除去します。黒鉛粉末などのドライ潤滑剤でギアを潤滑します。ベアリングにグリースフィッティングがある場合は、それも潤滑します。レールセクションは潤滑しないでください。潤滑剤に汚染物質が引き寄せられ、過度の摩耗につながります。 - レールを水平にし、位置をあわせる
レールセクションがツールスチールやその他の精密なストレートな端に接する部分をチェックし、触れてみてずれがないことを確認します。レールの位置調整を行うと、ドライブモーターのドラッグを防ぐことができます。レール間の距離は、システム全長にわたって一貫していなければなりません。 - ギアとベアリングの位置を合わせ、調節する
ギアがラックの上または下に重ならないようにします。ギアの位置を調節し、ギヤとラック間の動きを取り除きます。レールとクロスドライブも同じように位置調節を行います。位置調節ベアリングとレールまたはクロスレール表面間の動きを最小限に抑えます。通常、これらのベアリングは偏心部材に取り付けられています。ベアリングとレール表面の間に光が見えなくなるまで調節します。きつく締めすぎないようにしてください。ドライブギアが外れた状態で、ビームをレールに沿って転がし、動きにくさを点検します。ビームが最小限の振動で、ほとんど抵抗なく自由に動くようになるまで、必要に応じて調節します。 - テーブルとワークピースに対してトーチの直角度をチェックする
衝突によって、トーチがワークピースとの直角度から外れることがあります。 - トーチ取付け装置をチェックする
これは、切断に波打ちパターンを発生させる振動の原因となることがあります。 - 安全リミット機能をチェックする - 安全リミット機能はオペレーターの安全を確保し、切断機の損傷を防ぐために正しく機能する必要があります。切断機を各限度位置まで動かして、スイッチをテストします。各スイッチに達した時点で切断機が停止することを確認します。機械的なストップを点検し、正しく機能することを確認します。
- ドライブモーターとコントロールを調整する
ドライブモーターの同期がずれている場合は、ドライブモーターを調節することが必要な場合があります。トーチがホームポジションに戻らなかったり、特に X と Y ドライブが作動する組み合わせ動作で切断部品に間違いが発生する可能性があります。トーチを適切な場所に位置付けるためには、各軸の速度が等しくなければなりません。モーターの横滑りも最小限に抑える必要があります。これらの調整はシステム毎に異なるため、ドライブパッケージの調整については取扱説明書を確認するか、特定の切断機の認定担当者にご相談ください。